二人のおうち
「洋ちゃんって実はモテるでしょう?」
急にそう言った沙帆に、洋太は困ったように笑った。
「そんなことはないよ」
「だけど、今までいろんな恋をしてきたんじゃあないの?」
「まあそりゃあ、沙帆よりは年を取っているわけだからな」
洋太は苦笑しながら歩いている。
その隣りを沙帆が歩く。
周りから自分達はどのような関係に見えるのだろうか、洋太はそんなことを思っていた。
沙帆はフワリフワリとステップを踏むように上機嫌に歩いている。
「あっ、ここだよ」
暫く歩いていると洋太は立ち止まり、沙帆もそれに倣って立ち止まった。
店は手動扉になっていて、洋太はそれを押して開けると沙帆の背中を左手で押した。
「どうぞ、姫」
「あ、ありがとう」
レディーファーストで紳士な洋太に、慣れない沙帆は恥ずかしそうにした。