二人のおうち
 

「沙帆、決まった?」
 

「うん、このクリームパスタにする」
 

 
沙帆がメニューを指差して言う。解った、と洋太は呟くと、近くにいた店員を呼んで注文をした。
そんな洋太を、沙帆はじっと見つめていた。
 

 
「……」
 

「沙帆、さっきからどうしたんだよ。そんなに見て」
 

「洋ちゃんは、恋愛経験が豊富なんだろうなと思って」
 

 
洋太は虚をつかれたような表情で沙帆を見た。疑うような沙帆の視線に、洋太は困ったように微笑んだ。
 

沙帆はこんな洋太の表情にドキリとしてしまうのだった。
 

 
「まあ、沙帆より早く生まれた分はそうなんじゃあないのか」
 

「絶対だよ。洋ちゃんモテるでしょう」
 

「おいおい、何をそんなにムキになっているんだよ。欲求不満か?」
 

「そんなのじゃあないよっ」
 

 
洋太は喉をくつくつと鳴らして笑った。
洋太と話していると、沙帆は自分がどれ程子供の考えなのかがよく解る。
 

沙帆は少しだけ憂鬱になった。
 

 
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