神の使者
男がパンっと父親からのボールを受け取ると、顔を伏せて呟いた。
「…何でだよ」
「ん?」
「何で怒らないんだよ!」
顔を上げ声を上げる男。父親はそんな男を黙って見つめていた。
男はボールを握りしめ、目に涙を浮かべながら口を開く。
「俺は今まで好き勝手にやって来て、家にも帰らず仲間と毎日遊び歩いて、警察の世話にもなって親父達にもたくさん迷惑かけた。親父のちっぽけな夢も叶えないまま勝手に死んだ!なのに何で怒らないんだよ!こんな親不孝な息子を…何で…」
一気に吐き出し疲れたのか、男はその場に座り込んでしまった。父親はしばらく息子を見つめ、そして優しく口を開く。
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