神の使者
「確かに今まで怒った事無かったな。だがそれはお前を見捨てた訳じゃない。お前の人生だから、お前の生きたいように生きてほしかったんだ。それに、お前は十分俺達に親孝行してくれたぞ」
「え?」
父親は涙を流す男に近付き、大きな手で男の頭を撫でる。
「お前が生まれて来てくれた。それだけで十分だ」
「親父…」
また男の目から涙が落ちる。
「こうしてキャッチボール出来た。お前は誰よりも優しい大切な息子だ」
「う…う…」
男は声を押し殺しながら泣き、父親の胸にすがり付く。
そんな二人を見て達也もいつの間にか泣いていた。
俺も父さんと子供の頃はキャッチボールをしていたが、学校に行くようになって、友達や恋人と過ごすのが楽しくなってあまり父さんと話す事もなくなった。
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