赤い狼 壱
「な、何でしょうか…?」
捕まれた腕が、恐怖で震えているのが分かる。
消えてしまいそうな弱々しい声を出した私に、目の前の男は私に不満をぶつけだした。
「何でしょうか?じゃねぇよ。お前のせいで俺、びしょ濡れなんだけど。」
ニコニコと笑顔で、冷たいんだけど。と言ってくるその目が恐い。
笑ってるのに目が笑ってない。
なんだコイツ。めちゃくちゃ恐い。
でも
「手、離して。あと、ぶつかったのは私だけのせいじゃないと思うんですけどっ!
あんたも、よそ見してたじゃんっ!」
私にもあんたに不満はある。
………って、またやってしまった。ヤバい。
あぁあ、と頭を抱えながらチラッとソイツを見ると…目が合わせられないほど怒っていた。
あちゃー。
どうしよう。