赤い狼 壱
「だから運転手が居んだよ。《SINE》専属の運転手が。」
耳を澄ませて聞いてみたけどやっぱり運転手って聞こえた。
聞こえたけど《SINE》専属ってなんだよこの野郎。ちくしょう、カッコいいじゃないか。
「専属って隼人たち、どこのボンボン!?」
「あ?俺の親、IT会社の社長。」
「ふぅ~…んっ!?」
「うぉあ!?お前、納得し始めて驚くの止めろ!ビックリしちまったじゃねぇか。」
目を鋭くさせて睨んでくる隼人から目線を外す。
ちょ、マジかよ。スクープじゃん!!会社!会社の社長だってよ!しかもIT会社の!
それってカッコいい。塚、隼人は思い切りお金持ちのボンボンだったんだね。
悔しいなー、と顔を歪める。
でも、お金持ちも大変だもんな。たぶんそれは私が一番分かってると思う。
悲しいことに。
運転手とか懐かしいな、と目を細める。
そんな時代が私にも、確かにあった。
「稚春?」
ハッ。
「な、何?」
「何か懐かしい事でも思い出してたのか?」
思い出してるって顔してたぞ、と隼人が笑う。
よく分かったな。超能力でも使ったのかよ。