クイヌキヤ
・・・女とは同じ職場であった。


女は社内でもカウンターの花と呼ばれるほどの美人だった。

そんな女がどうして自分なんかと付き合うようになったのか、

今考えると、ほんの気まぐれだったのだろう。


付き合っている間の女は、

非の打ち所のないほどに優しく、そして綺麗だった。


女といるとき、彼は本当に幸せだった。


しかし、彼は見てしまった。


彼が女と一緒に暮らすようになってから2ヶ月がたった頃、

彼はいつもより早く会社を出た。


朝から風邪気味だと言って会社を休んだ女が気になったのだ。


卵粥でも作ってやろうと、帰りしなにコンビニで卵と自分のビールを買ってアパートに戻った。

アパートのドアの鍵を開けようとして、鍵が開けっ放しになっている事に気づいた。


不用心じゃないか。


と女を叱ろうと勢いよくドアを開けた向こうには、



見知らぬ男がいた。



見知らぬ男は、ばつの悪そうな顔をして、

何も言わずに部屋から出ていった。


すれ違いざまに、

見知らぬ男が彼の持っていたコンビニの袋にぶつかり、

その拍子にコンビニの袋は彼の手から落ちた。


買ったばかりの卵の割れる鈍い音がした。


部屋の奥には女が、驚いた表情で立っていた…。


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