クイヌキヤ
彼が問いただしても女は何も言わなかった。


彼は女を責めたかったのではない。

たった一言、浮気などしていないと言ってくれさえすれば彼は許していただろう。


しかし、女は最後まで何も言わなかった。


何も言わずに、女は彼のアパートから出ていった。


女が浮気したことへの憎しみより、

女を信じてやれなかった自分が憎かった。


時が流れ、女の裏切りにたいしての憎しみは消えていったが、

どうして信じてやれなかったのか

という悔いだけは残った・・・。
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