クイヌキヤ
…あの日、女が風邪気味だと言って会社を休んだ日。

お前さんが会社に行ってから、アパートに男が訪れた。

その男は、女の本当の彼氏じゃ。


些細な事で二人はケンカをしてしまった。


そのあてつけの様に、彼女はお前さんと付き合ったのじゃ。

そして、男は女がお前さんと同棲しているのを知り、

連れ戻しに来たのじゃ。


女は断った。自分には今、大切な人がいると。


じゃが、それは男の気持ちを確かめるために過ぎなかった。


男は、大声でこう言った。



『頼む。戻ってきてくれ』



と…



しばらくして、ドアが開いた。

そこには、コンビニの袋を下げたお前さんが立っていた。


男が部屋を出て行った後、

女はお前さんに何を聞かれても、何も答えなかった。


答える必要がなかったのだ。


なぜなら女にとってお前さんはもう必要ないからだ。


そして女はアパートを後にした。


女にはちゃんと行き場所があった。


本当に愛している男の元へ行ったのじゃ・・・」

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