初恋フレーバー
気になるヤツ
桜の花弁が

風の流れを浮かばせる。



それを見つめる

窓際の少女は、

春風になびく髪を

そっと耳にかけた。



セミロングの黒髪を、

白く綺麗な手が

撫でる。



白く透明感のある肌…


少しつり上がった瞳…


溢れる清潔感の中に、

少しの色気も混じる…



教室の入口で、

氷上 青希(ひかみ しょうき)

はその少女に

釘付けになっていた。



「リンク?
なに突っ立ってんだよ」



後から教室に

足を踏み入れた

成瀬 淳(なるせ あつし)は

青希に声をかけた。



リンクとは青希の

あだ名だ。



「えっ?
ああ…なんでもない」



「なんだよ?
なんか変だぞお前」



淳は首を傾げた。



「それよりリンク、
お前の席どこだ?
俺の席は…
おっラッキー
一番後ろだぁ」



はしゃぐ淳の前に、

青希は座った。



「おぉ…
リンクが前かよ。
これじゃ中学の時と
変わんねえじゃんか」



そんな淳の話は

青希の耳を通り抜けて

いた。



青希の目は

また窓際の少女に

向いていた。



少女の席は

窓際の列の

後から三番目。



青希たちの席は

その隣の列だった。



「リンク?
聞いてる?」



「あ…あぁ、
聞いてる聞いてる。
ほんと入学式
長かったよなぁ」



青希は

慌てて言った。



「誰もそんな話してねぇよ」



呆れ顔の淳は

教室内を見渡した。



「げっ…
あいつも同じクラスかよ…」



「ん?」



青希は淳の

目線の先を見た。



すると、

その人物も

2人に気づき、

手を振りながら

近づいてきた。
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