あたしの愛、幾らで買いますか?
今日は、朝から彼の声が聞けた。

それだけで、あたしは笑顔になる。

とっても単純な事かもしれないけれど、

でも、朔羅の機嫌がいいと

あたしも嬉しい。


パジャマ代わりにしている

上下のスエットを脱ぎ捨て、

あたしは全身が映る鏡の前に立つ。


鏡に映っているのは紛れもなく


【安藤歩美】


あたしだ。


肩と太ももに

赤黒いシミのようなものがある。

あたしは人差し指でツンと

押してみる。


「…いたっ」


この痛みで、あたしは少し落胆する。


‘これは現実なんだ…―’


と。



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