あたしの愛、幾らで買いますか?
大きく呼吸をして

色々な朔羅を思い浮かべてみた。


出会った頃の朔羅。

学校の校門で待っててくれた朔羅。

我が儘を言って怒った朔羅。

あたしを殴った後の泣きそうな朔羅。

優しく微笑んでくれる朔羅。

運転中の朔羅。


一つ一つ上げたらキリがないくらい

たくさんの朔羅が脳裏をよぎる。

テレビの前に置かれている香水の所為か

いつもよりはっきりとした

朔羅の残像が脳に刻まれていた。

なんて幸せなんだろう。

今のあたし、きっとアザがあることすら

忘れてしまいそうだった。

何事もなかったように、

あたしは自分の色が

『白』

だと勘違いしそうなほど。


今までのあたしがしてきた事は

絶対に消えないけれど、

少しずつ記憶から消えかけていた。


過去が消えない事知っているはずなのに。

< 297 / 484 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop