あたしの愛、幾らで買いますか?
「ただいまぁ~」


玄関口から愛しい声が聞こえた。

一番に、その声を聞き取ったのは

残念ながらあたしではなく

娘だった。

彼女は黄色い声を上げて


「パパ、おかいりー!」


と彼に抱きついた。

仕事で疲れているはずなのに彼は

瑛美を片手で抱き上げ

リビングに来た。


「よし、瑛美。
 ちょっと降りてもらえる?」

「やぁだ」


瑛美の答えも虚しく、

彼の腕から離され、

少しばかり機嫌を損ねたようだった。


彼は通勤カバンの中をごそごそと

なにやら探しているようだった。






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