これは、事実
私の質問に安藤ちゃんはため息をついた。
「田辺、質問が多いぞ………あと、実家は津波で流された」
「……あ…ゴメン…ご家族が…」
亡くなってしまったのか……これはタブーだったな……。
そんな私の気持ちを察してか、安藤ちゃんは不思議な顔をする。
「何か勘違いしてないか?実家は流されたけど、家族は生きてる」
「……え!?」
「ちょうど結婚40周年だかで旅行に行ってたんだよ……くだらないと思ってたけど、結婚記念旅行もたまには役に立つんだな」
そういう安藤ちゃんの顔は、なんだか嬉しそう。
「…素直に命が助かってよかったって言えないかなー」
「そんなこと思ってない!」
教師やってるのに、どこまでもひねくれた人だ。
「んで田辺。早く行かないのか?集会始まるぞ」
「あー!そうだった!」
目的忘れてた……。
「じゃあね安藤ちゃん!」
「私も後から行くがな」
安藤ちゃんに背を向けて、私は集会室に走った。
集会室に入ると、他の生徒はすでに整列済み。
どうやら学年ごとの集会みたいだ。同じ学年の子しかいない。
その中に、和子を探した。
「……あ!」
いた。
一番奥の端っこのほう。
私には気づいてないみたいだ。
とりあえず、生きててよかった…。
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