これは、事実
不安を残したまま、私たちは体育館に向かう。

「…じゃあ役割通りに動いて!」
先生の指示のもと、私たちは椅子を並べたり、紅白幕を貼ったりする。
「……」
この椅子に明日、大好きな先輩が座る…。
私は椅子を丁寧に並べながら、そんなことを思った。
それは、部活で世話になった先輩が多いが、1番はやっぱり。
「…早瀬川先輩…」
わたしの初恋の人。
この学校に入ってすぐ、恋に落ちた。
用は一目惚れなんだけど。
でも一回もしゃべったことはないし、多分あっちも私のことは知らないと思う。
だから、思いは伝えずに心の中に閉まっておくと決めた。
結果はわかっているから。
「…………」
もうすぐその先輩とお別れだと思うと、泣きそうになる。
でもがんばらなくちゃ。せめてこの卒業式は、成功させるんだ……。
「……は…る、遥!」
「ふえ?」
「もう、ボーッとしちゃって。もうすぐ準備終わるよ?私たちも戻ろ?」
和子だった。
周りを見ると、いつのまにか椅子はキレイに並べてあって、式台もちゃんと置いてあって、紅白幕もピッチリ貼ってある。すっかり卒業式の雰囲気になった。
「………」
本格的に先輩との別れが近くなってきたんだと実感した。
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