六天楼の宝珠〜亘娥編〜
「もしかして、あれが季鴬様……?」
鉦柏楼から出ないと言われる謎の人物。同じ場所にある亡霊の噂。
そう考えるのは無理のある事ではない。
もっと良く顔が見えないかと窓に頬を押し当てると、半端に引いた内戸がきしむ音を立てた。
同時に庭にいた人物は、何かに弾かれた様に踵を返す。
──こちらに気づいた?
あっという間に視界から消えてしまった『亡霊』に唖然としながら、翠玉は窓の外をしばらく見つめていた。
──確かこの辺りだったはず。
明くる朝、彼女は食事を摂るや否や無理やり阿坤を呼び出した。庭に出ると、見当を付けた辺りを丹念に調べる。石畳のちょうど境目、芝草の植え込みがあった。
「何かお探し物ですか? 奥方様」
「ええ。ちょっとこの辺りで落し物をしてしまって」
半分上の空で返事をしながら草むらに視線を這わせる。しばらく彷徨っていたそれが、ようやく目当てのものを捉えた。
「……あった!」
それは瓊瑶(ほうぎょく)の付いた耳飾だった。
昨晩例の女性(恐らく)が去って行く時に、小さな光が地に落ちるのを確かに見た。
透明感のある白い瓊(たま)は、中心近くが多色に光っている。のみならずそのものが紋様の形に彫られていて、細工の見事さは明らかだった。幾つもの種類の瓊瑶が下に連なっていて、明らかに相当の貴人の持ち物だと思われた。
──やはり、あれは亡霊などではなかったのだわ。
鉦柏楼から出ないと言われる謎の人物。同じ場所にある亡霊の噂。
そう考えるのは無理のある事ではない。
もっと良く顔が見えないかと窓に頬を押し当てると、半端に引いた内戸がきしむ音を立てた。
同時に庭にいた人物は、何かに弾かれた様に踵を返す。
──こちらに気づいた?
あっという間に視界から消えてしまった『亡霊』に唖然としながら、翠玉は窓の外をしばらく見つめていた。
──確かこの辺りだったはず。
明くる朝、彼女は食事を摂るや否や無理やり阿坤を呼び出した。庭に出ると、見当を付けた辺りを丹念に調べる。石畳のちょうど境目、芝草の植え込みがあった。
「何かお探し物ですか? 奥方様」
「ええ。ちょっとこの辺りで落し物をしてしまって」
半分上の空で返事をしながら草むらに視線を這わせる。しばらく彷徨っていたそれが、ようやく目当てのものを捉えた。
「……あった!」
それは瓊瑶(ほうぎょく)の付いた耳飾だった。
昨晩例の女性(恐らく)が去って行く時に、小さな光が地に落ちるのを確かに見た。
透明感のある白い瓊(たま)は、中心近くが多色に光っている。のみならずそのものが紋様の形に彫られていて、細工の見事さは明らかだった。幾つもの種類の瓊瑶が下に連なっていて、明らかに相当の貴人の持ち物だと思われた。
──やはり、あれは亡霊などではなかったのだわ。