虹が見えたら

厨房の奥の部屋から出入り口へと出てきた沢井がニコっと笑って声をかけた。


「その様子だと、もうお腹いっぱいってところですね。
とても幸せそうな顔をしておられる。」


「まっ、色気より食い気って言いたいんでしょう?」


「いえ、そんなことは。
僕がマネージメントしてる店なので、うれしそうな顔をして帰ってもらえると僕もうれしいんですよ。」


「あ、そうなんだ。城琳学院の生徒さんが店員さんなんですもんね。」


「そうそう。
時間がとれれば、君とここでお茶していたいんだけどね。
開店早々で裏方も忙しくて。
じゃ、今度打ち合わせのときにまた。

あ、早速のお越しありがとうございました。気をつけて帰ってね。」


「はい。」


この後、なるみは他の4人に沢井のことでいろいろ質問攻めにあったことは言うまでもなかった。



((今日の沢井さんは元気で楽しそうだったなぁ。
休養とって仕事できるようになったのかな。))



それはちょっぴりいいことでもあるのだが、寮の前にもどってきて、なるみはケーキの箱をしっかりと持ち直して管理人室へと入った。



「なるみちゃん・・・お、おかえり。」



「ただいま。あ、あのね・・・遅くなっちゃってごめんね。
友達4人と新しい洋菓子屋さんへ行ってたの。

とてもかわいらしいケーキとかムースとかあってね・・・これお土産なんだけど。」




「僕に?」



「うん。かわいいの好きでしょ?」



「うん!」
< 120 / 170 >

この作品をシェア

pagetop