虹が見えたら
真樹は早速、コーヒーを入れ始めた。


「なるみちゃんもコーヒーがいい?」


「私はもうケーキは・・・口の中が甘ったるくて。
塩味のものがほしいくらいで。」


「じゃあ、塩せんべいあるからお茶いれてあげるね。」



なるみはちょっぴりホッとした。

洋菓子店のマネージメントを沢井がしていることや城琳学院のことはできるかぎり黙っているにこしたことはない。



幸せそうな笑みを浮かべてケーキを食べ終わった真樹は、すぐに真剣な表情に変わると


「明日の城琳学院の沢井と打ち合わせだけど、ちょっとでも不明なことはすべてわからないからって僕に話を振ること。いいね。」


となるみに念を押した。

そしてなるみの返事もきかないうちに、


「打ち合わせの後で、2人でどこかに行かないこと。
どうしても行きたいっていうなら、僕は責任が持てないからね。」


と、言ったときには冷たい表情になっていた。



なるみはコクンと頷いた。

うっかり口を開けば、今日洋菓子屋で沢井に遭ったことまで覚られそうで声が出なかった。




すると真樹は意外にも、さらっと沢井となるみとの偶然の出来事をとりあげて言った。


「僕が沢井と同じ状況だったなら、彼と同じことを言って同じことをしているかもしれない。
けど・・・僕はなるみの保護者で・・・保護者失格だ。」



「真樹さんは保護者失格だなんてことありません。
学校も行かせてくれてるし、生活すべて不自由してないし。
落ち込むことなんてないですって。ほんとに・・・えっ!?」

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