虹が見えたら
なるみはサッカー部ときいて、思い出した。
「あっ!そういえば・・・服装が違うからぜんぜん気付かなかったわ。
うちとの試合のときに、高倉君をマークして困らせてた・・・」
「高倉?ってことはあんたは流沢学院の生徒か?」
「うん、3年の山田なるみです。
サッカー部に臨時でマネージャーしてたことがあるの。」
「へぇ・・・高倉の彼女?」
「そ、そんなんじゃないって。
私は今日はお仕事でここへ来たから・・・。」
「仕事?
高校生が学校相手の仕事なんてしていいのかよ。
もしかして職員のプライベートの相手か?」
「どうして、そっちに話がいくのよ!
さっきまで事務室で学生寮経営の話をしてたのよ。
ウソだと思うなら沢井さんにきけばいいわ。」
「ウソだとは思わねぇよ。
初対面で俺相手に、必死な顔して説明する女生徒なんて面白い。
気に入った。
俺とデートしようぜ。
まずは、うちの学校の生徒がやってるケーキ屋でも行くか?」
「だめだって。私は仕事中なんだもの。
突然いなくなったら、会社の人が心配するし。」
「会社の人?
ここには今、おまえと俺だけだが。
そうか・・・こうやって話しててもデートだよな。
「で、で、でーと?何考えてんの?
それにさっきからおまえって、人生の先輩に失礼だわ」
「俺が池に落ちないように助けたんだぞ。
まあ、突いたのも俺だけど。
じゃ、山田さんって呼べばいいのか?
俺の我がままきいてくれんなら、あんたのこと『なるみ』って呼びたいんだけど。」
「私の後輩でなるみって呼ぶコなんていないわ。」
「くっ、いちいちうるさいなぁ。
こうすりゃ、なるみって呼んでほしくなるさ。」