虹が見えたら
大崎郁未はなるみの両肩をつかむと唇をなるみに近づけた。
「やっ!何・・・やめてよ!いやっ」
次の瞬間、郁未は鯉のいる池へと顔から突っ込んでいた。
「バカは頭を冷やせ!だいたい生徒が来客用の玄関に何の用だ?
タバコなら没収だ。
婦女暴行事件でも起こせば即刻、サッカー部は廃部だからな!」
「あ、ゲホゲホ・・・じょ、冗談ですって。
廃部は勘弁してください。
じゃ、さ、さよならーーーー!」
なるみの前に沢井の大きな手が差し伸べられた。
「申し訳ありません。ここは、あいつの好きな場所なのを思い出して追いかけてきて正解だった・・・。」
「あの、お気に入りの場所に私が侵入しちゃって気を悪くしてたんですか?」
「いや、気を悪くしたんじゃなくて・・・ゴホン!・・・好かれたみたいですね。
優秀な生徒なんですが、ワケありなのでかかわりあわない方がいい。
ここは男子校だから、なるみさんがひとりでうろつくには危なすぎます。」
「でも、沢井さんが守ってくれました。うふふ」
沢井はなるみの手をつかんでひっぱると、すぐに学校の駐車場へと向かった。
「お仕事はしないんですか?」
「あとは部下で十分できますから。
僕が担当は君でと指名したんだから、これからは2人きりの仕事です。
あ、心配はいらないから。
この前もいったけど、君の合意なしに襲うようなマネはしません。
あ、携帯の電源は切っててください。
保護者の方へは僕からメールをいれておいたし、心配いりません。」
「えっ、いつの間に?
沢井さんってお仕事となるとすごいんですね。
うちのお兄ちゃんたちもすごいけど・・・。
みんな大人で私はついていけなかったです。
それで、空気が重くて苦しくなってしまって・・・」