虹が見えたら

大崎郁未はなるみの両肩をつかむと唇をなるみに近づけた。


「やっ!何・・・やめてよ!いやっ」


次の瞬間、郁未は鯉のいる池へと顔から突っ込んでいた。


「バカは頭を冷やせ!だいたい生徒が来客用の玄関に何の用だ?
タバコなら没収だ。
婦女暴行事件でも起こせば即刻、サッカー部は廃部だからな!」



「あ、ゲホゲホ・・・じょ、冗談ですって。
廃部は勘弁してください。
じゃ、さ、さよならーーーー!」



なるみの前に沢井の大きな手が差し伸べられた。


「申し訳ありません。ここは、あいつの好きな場所なのを思い出して追いかけてきて正解だった・・・。」



「あの、お気に入りの場所に私が侵入しちゃって気を悪くしてたんですか?」



「いや、気を悪くしたんじゃなくて・・・ゴホン!・・・好かれたみたいですね。
優秀な生徒なんですが、ワケありなのでかかわりあわない方がいい。

ここは男子校だから、なるみさんがひとりでうろつくには危なすぎます。」


「でも、沢井さんが守ってくれました。うふふ」



沢井はなるみの手をつかんでひっぱると、すぐに学校の駐車場へと向かった。


「お仕事はしないんですか?」


「あとは部下で十分できますから。
僕が担当は君でと指名したんだから、これからは2人きりの仕事です。

あ、心配はいらないから。
この前もいったけど、君の合意なしに襲うようなマネはしません。
あ、携帯の電源は切っててください。

保護者の方へは僕からメールをいれておいたし、心配いりません。」



「えっ、いつの間に?
沢井さんってお仕事となるとすごいんですね。

うちのお兄ちゃんたちもすごいけど・・・。
みんな大人で私はついていけなかったです。
それで、空気が重くて苦しくなってしまって・・・」

< 125 / 170 >

この作品をシェア

pagetop