虹が見えたら
そして翌日、沢井のいる城琳学院の事務室へなるみと真樹、そして伊織は向かった。
なるみの心配などすべて覆すように、沢井と伊織の間で学生寮の建築場所の確認から経費の打ち合わせまでスムーズに話は進んでいった。
そして、寮経営のシステムや学校との連携など真樹と沢井の部下数人との間でつめられていった。
((すごい・・・私だけとってもお子ちゃまな気がする。))
なるみが仕事場の雰囲気にのまれていると、真樹が少し外に出るように合図をした。
なるみは外に出て1つ深呼吸をする。
事務室に近い来客用玄関を出てすぐ前には池があり、鯉が泳いでいた。
すると突然、後ろからドンとなるみは背中を押されて声をあげた。
「きゃあーーーー!」
「おっと・・・だいじょぶだ。冗談だよ。」
なるみは腕を掴まれて引きもどされたが、池の前に座り込んでしまった。
「はぁはぁ・・・な、何なのよ!」
慣れない校内でいきなり池に落とされそうになった怖さと助かった安堵感とがごちゃまぜになって怒りがこみあげた。
「ご、ごめんな。
まさか、俺とさほど変わらない年の女だなんて思わなくてさ。
ここで鯉なんか見るのっててっきりおばさんかと。」
服装を見るかぎり、おしゃれっぽい感じではあるが明らかに校則違反だと思われる。
((もしかして不良なの?))
「おまえ、何者?」
「自分から名乗りもしない人に説明する必要なんてあるのかしら?」
「あはは。なかなか強気じゃないか・・・確かにな。
俺は城琳学院高校 2年の大崎郁未。
サッカー部次期主将だ。
これでいいか?」