虹が見えたら
「いいえ。ある意味、沢井さんのおかげで保護者は私の兄だけになりました。」
「えっ?」
「真樹さんからも告白されたんです。
学費とかは今までと変わらず支援してくれるというんですけど、保護者でいられないって。
私を女として好きだって。」
「そう。彼も真剣になったんだ。
じゃ、こっちも切り札を使うしかないね。」
「切り札?」
「さっき会った、大崎郁未くんなんだけど・・・彼の別の名前は『須賀浦郁未』っていうんだよ。」
「ええっ・・・それって・・・」
「須賀浦直樹の息子さ。
うちの学校にいる時点でわかると思うけど、もちろん外でできた子どもだけどね。
須賀浦真樹の甥ということになるね。
今日の感じじゃ、真樹さんは須賀浦家から何もきいてないと感じたんだけど、近いうちに大変な目に遭うことになる。」
「えっ!大変な目って・・・何ですか?」
「知ったら、君はつらくなるかもしれない。」
「かまいません、教えてください。」
「今、須賀浦直樹は病気で入院してるんだ。かなりの重病らしい。
それで、身内や社員の中で社長の穴を何とかしようとはしているみたいだけどね。
不動産関係はうまく話が進んでないらしいんだ。
何せ、長いつきあいでの信用とか、実績がものをいうからね。
そこで、これはウワサの段階なんだけど、真樹さんを須賀浦本家に呼び戻すとの話がね。」
「真樹さんが須賀浦の家にもどるんですか?
嫌ってるところなのに?」
「本人の意思に関係があるかどうか・・・兄弟の話し合い次第かもしれないけど。
少なくとも、そうなったら君の存在を彼は須賀浦の家や社内で説明しなければならなくなるね。
もっとも、君が真樹さんのお嫁さんになれば彼には有利なのかもしれない。」