虹が見えたら
沢井はなるみを連れて砂浜へとやってきた。
「まだ苦しい?」
「いえ、ここは気持ちいいくらい。」
「それはよかった。長時間車で移動するのもつらそうだと思ったし、例のケーキ屋に行ってもうれしくないかと思ってね。
でも、ここは海しかないから・・・」
「あの、お疲れだったら膝をお貸ししますけど。」
「あははは。最近はきちんと休むときは休んでいます。
それに、今は寒いから風邪をひいてしまうし。」
なるみは以前より、健康的で笑顔が多くなった沢井を見てると自分の方が元気をもらえた気がした。
その後、SF映画を観て、沢井の普段着を見繕い、洋菓子店で休憩して。
((これってデートしてるみたいよね。お仕事じゃない・・・たぶん。))
「どうかした?」
「1つ質問なんですけど、これからも学生寮の打ち合わせってこんなことするんですか?」
「嫌ですか?」
「嫌ってわけじゃ・・・ただ、これって仕事じゃなくてデートみたいで。」
「デートですよ。こうでもしなきゃ、君に男避けを施した保護者殿から奪えませんからね。」
「でも、言葉遣いとかずっと仕事してるみたいだし。」
「ああ、いちおう仕事で来るように言った手前、クセでね。
それと・・・普通に話しかけたら、あせって何をしてしまうかわからないから。
あははは、約束だから僕は待てます。
それとも怒ってる?
仕事の担当なんてまわりくどいことをして、君の保護者を怒らせて。」