虹が見えたら
「ええっ!真樹さんが直樹さんの仕事をするんですか?
じゃ・・・もしかして・・・ここは?」
「あっ、そこまでは知らなかった?・・・。ごめんね。
あの・・・ね、しばらくアメリカで仕事をすることになってしまう。
なるみちゃんは何も心配することはないからね。
誤解のないように言っておくけど、僕は直樹さんの後がまになる気はない。
もちろん重役の席もいらない。
僕にも自分の会社の社員たちがいるしね、その人たちの意見も聞かずに整理や合併なんてできないからね。
予定としては、役員会で新しい社長を指名してあっちはあっちでうまくやっていける手伝いだけしてこようと思う。」
「でも、須賀浦直樹さんや役員さんたちは真樹さんに社長になってほしいんでしょう?」
「そんなことないって。
正直、いろんな思惑で僕の応援をすると言っている人は多いみたいだけど、逆に僕が先頭に立つことが困る人たちの方が圧倒的に多いんだ。
そんなことになったら命すらないかもしれないじゃない。
大崎さんも候補に挙げられたみたいだけど、手助けは惜しまないけど代わりはしない。
ただ、それだけだ。
それよりも・・・」
真樹はなるみの手を握ってつぶやいた。
「沢井もダメ、大崎さんの息子でもダメ、保育園の先生も嫌だ。
なるみを連れて行きたい。
でも、アメリカ人はもっと手が早いから困るしなぁ・・・。」
「ぷっぷーーーーーーっ!真樹さんったら。」
「笑いごとじゃない!
沢井が大崎郁未を蹴り飛ばさなきゃ、僕が蹴り飛ばしてた。
なるみちゃんは優しくて隙だらけだ。
悔しいけど、どうしても僕はアメリカへ行って来なきゃならないし、伊織も春休み中は本家付にもどる。
その間になるみちゃんは大学の準備もあるし、卒業式だって・・・。
なるみちゃんの卒業式は絶対出席するって決めてたのに。」
真樹がすまなそうな顔をしてなるみを見ている。
((またそんな顔しちゃうし・・・。))
「過保護にしないんじゃなかったんですか?
私なら大丈夫ですって。」