虹が見えたら
大崎郁未の思惑
城琳学院の学生寮も完成し、生徒たちが生活をするようになった頃。
なるみは寮を見学してみないかと沢井に誘われた。
早速、城琳学院に行ってみると、引っ越しの搬入があちらこちらで始まっていた。
「虹色寮もまだ新しいけど、新築の建物にぴっかぴかの生徒たちが住むってやっぱりいいなぁ。」
「まぁ、女子寮ではないところが少しがっかりではあるけどね。」
いつもスーツ姿だった沢井がカジュアルシャツにジーンズ、そしてエプロンがけという姿でなるみを迎えた。
「沢井さんでもそんな格好するんですね。」
「最初に会ったときも浴衣だったと記憶してるんですけどね。
なるみさんの頭の中の僕は、いつでもどこでもスーツなのかな。」
「あは・・・ごめんなさい。
今の方がお話はしやすいですよ。
仕事中みたいな冷たい感じがしないからでしょうね。」
「ところで・・・なるみさん前に大崎郁未に会ったことがあるでしょう?
彼がね、ここに住むことになったんです。
自宅生で自宅から余裕で通うことができるのにね。」
「えっ・・・。あのこって須賀浦郁未だっていう・・・。」
「シングルマザーといっても彼の母親は経済的にも家庭的にもきちんと彼を育てていましたからね、問題はなかったんです。
本人も小さなイジメやときどき爆発することはあっても、母親は尊敬、信頼していましたからね。
でも、今この時期に・・・一人暮らししたいと。」
「成長的なことじゃないんですか?
男の子なら冒険に出たいみたいな・・・。」
「それならいいんですが、僕がつかんだ情報では須賀浦真樹を彼の家で何度も見たという部下からの話があって。」