虹が見えたら

結局、なるみは話が難しくてよくわからないまま、帰り道を歩いていた。

その途中、聞き覚えのある声がして振りかえると、花咲保育園の桐谷が走ってきていた。



「桐谷先生・・・。お久しぶりです。」


「やあ、しばらく見ないうちにきれいになったね。
あ、いや、前がきれいじゃないってことじゃなくて・・・うちにきてたときってかわいかったっていうかさ。
なんか大人になったって感じ?」



「ありがとうございます。
保育の勉強をしているのに、花咲保育園に不義理のままですみません。」




「勉強の方が忙しいのかな?
それとも、デートだったりして・・・」



「あ、それがちょっとお仕事を手伝ってて。」



「仕事?」



「私の保護者が、ちょっとややこしいことになってて、それで私が代わりを務めたりして。
でも、もうお仕事はほとんど終わりにさしかかったので来週くらいにおじゃましようと思ってました。」



「来週来てくれるの?
そりゃ、保育園のみんなも喜ぶよ。
あれ・・・なるみちゃん?」



「あ、すみません。ちょっとぼんやりしちゃって。」



「もしかして・・・なるみちゃんは恋してる?
相手は、保護者っていうきれいな彼かな。」



なるみは自分に危険が及ばないようにと出て行った真樹のことを桐谷に話した。

須賀浦直樹と真樹の家庭のことや会社のことも話し出したら心配なことがとめどなく出てきてしまうほど桐谷に話してしまうのだった。


「すごい人だったんだね。彼は・・・。
僕は企業のこととか疎くてわからないけど、真樹さんが君をどんなに思って出て行ったのかはわかるよ。

次の誘拐事件は、本物になるとも限らないとすれば、絶対君のそばにいるべきじゃない。
僕でもそう考えるね。」
< 153 / 170 >

この作品をシェア

pagetop