虹が見えたら

夕食後、食堂で真樹は檜山里奈のことをみんなに説明した。
そしてあらためて、寮としてはこのような説明しかできないのだとつらそうに話すのだった。

「きゃぁ~~~ん、真樹ちゃんの悲しげな顔、萌え~~~」


「ここ3年ほどこういうことは起こらなかったんだけどねぇ。」


「えっ、その前はあったってこと?」


「確か心中事件を起こした娘がいたってきいたわ。」


「心中ーーーーー!?」



なるみは先輩たちの会話に耳が傾いてしまった。

「2人ともうちの生徒だったんですか?」


「姉と同い年の人だったんだけどね、オーナーがまだ管理人になって間もない頃。
やっぱりお腹にできちゃったのよ。
それで今回みたいにさっさと認めて出ていけばよかったんだけど、相手の男が付属の大学生でね、お腹の子がオーナーの子だと勘違いしてオーナーがナイフで切りつけられたという事件になったの。」


「ええーーーーっ!」


「彼女の方が大学生の彼の子だと説明しても、彼氏は認めなかったの。
それで、彼女はとうとう彼氏に包丁を突き付けて、無理心中をはかったわ。」


「で、2人は死んじゃったの?」


「男と彼女のお腹の子は死んじゃって、彼女は命をとりとめたものの、精神にきてしまったらしいわ。」


「そ、そんなぁ・・・。」


「そのときにオーナーの心もかなり傷ついてしまったらしくて、しばらく入院していたはずよ。」



((それで、あんなに強く私に・・・約束を。))



なるみは真樹のかわいらしく笑う笑顔と、今にも崩れ落ちそうなほどの悲しげな顔を思い出して胸が苦しくなった。


「だめだ・・・眠れない。気になるからちょっと様子見てこよう。」


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