虹が見えたら
なるみが管理人室を出て行こうとしたそのとき、ドアノブに伸ばした手を真樹に引っ張られ、ドアを背中にしたなるみの唇に真樹のそれが押し付けられた。
そして何度もなるみの唇が舐め上げられるような激しい動きをする。
一瞬目を見開いたなるみだったが、思わずぎゅっと目をつぶって体も固まって動けない。
「僕と伊織は親友だけど、僕は男好きではないよ。
伊織の方はその気かもしれないけどね。」
「えっ・・・」
「なるみは見かけより強情だな。
結局、僕の方がなるみに秘密をはがされてしまった。
思い上がってる?そうかもしれないね。
僕は、お願いすればなるみは素直にきいてくれると思ってた。
きいてくれないっていう先のシナリオまでは考えてなかったから、こんなふうになってしまって。」
なるみはゆっくりと真樹の顔を見上げてみると、自分の瞳をのぞきこむようにじっと見ている。
「秘密は守るから。守るかわりに、私を部屋までお姫様抱っこして運んで。」
「驚いたね。姫は結構したたかだったんだ。
では2階まで運ばせていただきましょう。」
しかし、真樹はなるみ部屋のベッドに座らせると、そそくさと階段を下りてもどってしまったのだった。
((これじゃ、あの先生と変わらないじゃないか・・・。))
すると、真樹の携帯電話になるみからメールが来た。
『私もその気になってもいいですか?』
「なるみちゃん・・・」
真樹は、早速返信をした。
『ぜひ、そうしてほしいね。
僕以外の人には節度ある生活をね・・・。
うれしすぎて、心臓が止まっちゃいそうだよ。』
なるみは唇を両手で押さえたまま胸がどきどきしていた。