虹が見えたら
なるみは、涙を潤ませて叫んだ。


「ごめんなさい、私、私はただ、何でもかんでも真樹さんにしてもらってばかりで申し訳なくて。
自分で稼いで、自分でがんばれば、すてきなことが見つかるかなって。

好きな人にどきどきしたり、憧れの人を応援したりできるかなって・・・でも、私は結局真樹さんに迷惑をかけてしまうばかりで。」



「違う。違うんだ・・・」



「えっ?」



「あいつが言ってただろ。須賀浦直樹が後見人だとか、須賀浦の人間とか。」

あんな輩がまた君の前にどんどん出てくるかもしれない。
君のお姉さんはあの男に財産目当てで近付かれたことがわかって別れた。
そして、会社の経営が悪化してある意味悪い男が去ってくれることになった。

でも、なるみは僕の名前のせいで、ゆがんだ解釈した奴に何をされるかわからないことがわかった。

名字が違うからすっかり油断してたんだ。
なのに・・・調べまわってまで・・・。
こんなことなら、当面のお金だけ渡して、なるみの前に現れなければよかった。
手紙なんて出さなきゃよかったんだ。」



なるみは真樹の両手を左右それぞれ握り返して、首をふった。


「ううん、私が世間知らずでどんどん自分から危険なことを引き受けちゃったんだもん。
真樹さんから手紙をもらったとき、どんなに私がうれしかったか。

ほんとに生活に行き詰って、いかがわしいメイド喫茶でもぎりぎりの生活してて、真樹さんに助けてもらってなかったら、何人のおじさんに持ちかえられたかわからなかった。


だから、だから・・・今日なんてぜんぜん平気。
また助けてもらえたし。


それにね・・・たとえ助けてもらえなかったとしても、手遅れだったとしても、いいの。
ここまで楽しく生きて来れたんだし、学校まで行かせてもらえて幸せで、虹色の寮生活も楽しくてほんとに感謝しきれなくて。

でも、確かに自分が遠慮することばかりで、真樹さんに手間をかけさせてしまうのはよくないのでこれからは私、何でもいうことをききます。
部屋から出ちゃいけないと言われたら、出ませんから居なくならないで。

そばに居てください。」



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