虹が見えたら
過去を知りたくて

監視カメラにセキュリティロック。
芸能人も住んでいると聞かされたマンションに恐る恐る足を踏み入れる。

真樹はクスクス笑っている。


「ここはまだマンションのエントランス部分だよ。
あ、ジャケットの胸開かないようにだけ気をつけて。
守衛さんがしっかりのぞいてるだろうからね。」



「えっえええーーー!それじゃこんな格好してたらやって来ちゃうんじゃ・・・」



「たぶん大丈夫だと思うよ。僕といっしょだしね。」



「あの・・・ここもマンションごと真樹さんの?」



「うん。仕事するのに都合のいい場所だし、そのまま寝てしまうことも多いからね。」



「いえ、そうじゃなくって・・・ここ全部お持ちものなのでしょうか?と。」



「はい。」



なるみは立ち去ろうとしたが、真樹に引っ張られてエレベーターに乗せられた。
そして、真樹の部屋に入るとハンガーにつるされたワンピース、箱の中にはTシャツとジーンズ。
なるみのサイズのものが置いてあった。


「急だったからね、くまさんのパジャマまでは用意できなかったよ。」



「えっ、寮に帰らないんですか?」



「ごめん、今夜は送れない。
ちょっと仕上げないといけない資料作りがあってね。

でも、なるみちゃんをひとりにはできない。」



「あ、私のことは気にせずお仕事してください。
ひとりで寮に戻れますし、もどれば寮長も友達もいますから。
え!?・・・ま、真樹さん・・・。」



真樹はなるみをベッドに押し倒すと冷たい口調でつぶやいた。

「僕の言うことを聞かなかったり、隠れて黙っていたからこんな危ない目にあったんでしょう!」
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