虹が見えたら
伊織はなるみの頭をなでながら、笑顔になる。
なるみだけが見る、素敵な笑顔だった。
「あたりまえだろ。
お兄ちゃんは今、なるみの目の前にいる。
ニセモノは所詮にせものだ。
そうだな・・・そんな裏事情をきいてしまったら、兄貴らしいことでもするかな。
俺は虹色寮の近くにマンション借りて住んでるんだけど・・・土日や休日は俺のところに住め。」
「ええっ!!そんな・・・困る。それ困るよ。」
「どうしてだ?せっかく兄妹の名乗りも済んだのに。」
「だって、伊織さ・・・いえ、お兄ちゃんも学校や寮のコたちに目立ってるんだよ。
いっしょに住んでなんて言ったら私、殺されそうで。」
「兄妹なのが分かったっていえばいい。」
「みんな信用してくれないよぉ。
私、虹色寮の部屋で十分満足してるんだから、もういいよ。
真樹さんのことも気にしないから・・・だからお兄ちゃんは今までどおりにお料理作って。」
伊織は少し不服といった表情だったが、困ったことは相談できる兄ができたというのはなるみにとってとても心丈夫な出来事だった。
そして・・・なるみが寮へもどると、真樹が心配そうに飛び出してきた。
「なるみちゃん!どこへ行ってたの?
出かけるなら、行く先とかちゃんと言ってから出かけてくれないと!
あれ、伊織といっしょだったのかい?
もしかして・・・・・?」
「はい、お父さんのお墓参りしてきました。」
「そっか、伊織は兄だと名乗ったんだね。」
「はい。土日だけでもいっしょに住まないかって・・・。」
「な・・・それは許可できない。
いくら実の兄貴でも、なるみちゃんの保護者は僕なんだからね。」