虹が見えたら
なるみは体が震えるのを感じた。
((伊織さんのお仕え先って須賀浦家・・・?))
「じゃ、あの手紙は・・・真樹さんが私にくれた手紙の内容は・・・嘘なんですか?」
「それは違う!
真樹は、本家には内緒で実の父親の名前で不動産関係の仕事をたちあげていたんだ。
大学でもとても優秀なやつだった。
優秀なやつだったから、実の母親の派手な生活の影響を受けすぎた。
チンピラにボロボロにされたのを俺がいつも介抱してやった。
その仕事上、資金難でつまずいたときにうちの親父に救ってもらったといっていた。
そんな痛々しい付き合いの中で俺がおまえの話を自分でも気がつかないうちに、楽しそうにしゃべっていたらしいんだ。
真樹はなるみを見に行ったらしい。
そのときは、近所の友達の家に住んでたとかきいた。」
「うん、そうだよ。友達の家も転々と泊らせてもらったんだけど・・・自力で稼がないと前に出られなくて。
それであのメイド喫茶が日給よかったから・・・」
「俺の話に出てくるなるみが、学校やめてあんな店で働くなんてだめだと話していたんだ。
でもな、これから先のことを考えると、俺がなるみと暮らしていく自信がやっぱりなくてな・・・前科者の妹だなんて言われたくないだろ?
それで真樹が・・・今のようになるまでずっと知恵を振り絞ってくれた。
そしておまえも、真樹になら心をゆるせているみたいだし、うれしかったんだ。
だけど、なんかなるみも真樹も最近どうも変だと思って。
何があったんだ?
いきなり、兄貴面してうっとおしいかもしれないけど、困ってることがあるなら聞きたい。
ここなら、言ってくれるんじゃないかと思って。」
なるみはいつぞやの大人のキスをしてきた真樹と、冷たくよそよそしくなる真樹に不安をおぼえていることを伊織に話した。
「私が子どもなんだよね。
男の人だっていろいろ考えてることあるんでしょう?
お仕事だって詳しいことなんてぜんぜん知らないし、私は学校の勉強さえしていればいいんだから・・・。
きっと深い意味なんてないんだと思うけど・・・だけど家族にならなきゃ、って思うとだめなの。
お兄ちゃんってどうしても呼べなくて。」