虹が見えたら
伊織は苦笑いしながら
「生活費を出してあげますよ~なインスタント家族だろ。
ここに身内がいることが発覚しても、肉親よりインスタントを優先させているおまえたちはお互いに引かれあうしかないんじゃないの。」
「なっ・・・何言ってるの。
私はべつに、今から住まいをお兄ちゃんちに変えてもぜんぜん平気なんだから。
家族っていっても寮生として寮の部屋にひとりで住んでいるわけだし、真樹さんが勝手に私の世話をかってくれただけだもの。
素直に親に感謝するしかないじゃない・・・。」
「真樹を好きにはなれないってことか?」
「人として好きだよ。男の人としてみても悪くない。
ううん、私にはもったいないと思う。
だってほら、社長だよ。お金持ちさんだし、頭いいし、ファンの子も多いし。
お兄ちゃんとはタイプの違うお兄さんでいいなぁ・・・なんて都合よく思ったり。
でも、ときどき・・・」
「ときどき、何?」
「ううん、何でもない。
うまく言葉で表せないなって。
じゃ、またね。おつかれ~」
なるみは自分の部屋にもどって、フゥと息を吐いた。
「ときどき、怖くなる。
真樹さんが・・・ううん、怖いと感じてるのに何も抵抗しない自分が怖い。
こんなことじゃ、相手が誰でも流されちゃうんじゃないかって気がしてくる。
そんな危ういことじゃダメなのに。
きっと私はそこが子どもなんだ。たぶんそう。
もしそうじゃなかったら・・・」
そして翌日から朝の登校前、食事のとき以外で真樹に会うことがなく、気がついたら修学旅行の前夜になっていた。
コンコン・・・
「はい」