6月の蛍―宗久シリーズ1―
違和感も、嫌な予感も、思考の隅に包んで隠してしまっていた。




気付けた筈なのに。








「咲子さん」

「――っ嫌です!!」




伸びてきた金森の手を跳ね退けた。





嫌!

嫌だ!


こんな男に……!






跳ね退けられた右手首を軽く回しながら、金森は眉をひそめた。


睨み付ける私を見つめ返し、軽く鼻で笑う。






「あなたは、もっと頭が良い方だと思いましたが」

「ご自分が何をしているのか………理解していらっしゃるの?」



もちろんですと、金森は口元を笑みで歪めた。




「医師として、あなたの御家族に検査の報告をしなければならない事も、きちんと理解しておりますよ?」









家族に……………。








私が、子供を産めない身体だと………?








「それだけはどうか止めて下さい!そんな事を知られたら………」

「家を追い出されますか?」






………この男は、見透かしている。




何もかも。




私の弱みも、事情も、私を苦しめる全ての可能性を………見透かしている。





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