6月の蛍―宗久シリーズ1―
「ふん…」



鼻を鳴らし、姑は忌ま忌ましそうに私を睨み付けた。





「身奇麗にする暇があるなら、さっさと仕事をせんか。出来損ないのくせに、着飾る事だけは一人前だな」



「………申し訳ありません」




去って行く姑の後ろ姿を見つめ、唇を噛み締めた。










なぜそれほど、私が憎いのだろうか。



子供ができないからだろうか。



私のやる事全て、姑には癇に障るらしい。



日常茶飯事であった。



姑の言葉に、思いやりを感じた事はない。


身体が弱い事すら、姑から見れば仮病になる。







けれど、それを夫に知られたくは無かった。


もしも知ったなら、あの人は、その場に居ない自分を悔やむに違いないから。








私が黙って、耐えれば済む。



そうすれば私は、夫の側に居る事ができる。



だから、耐える。





それでも、例えようの無い虚しさが込み上げてくるのも事実ではあった。









……夕飯の支度をしなければ。



小さく溜息をつき、私は少し乱れた髪を指先で直す。





「……………」


心臓が、鳴った。
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