キマイラ



「食べないの?」

『……』

「なんで貰うの?」

『……』



ああー!!
また黙っちゃったァ!!
いい感じになってたのに!



「あ、えーと、ハチミツ1個ね?はい!」



俺は何とか会話が続くようにハチミツ味を取り出し渡す。
彼女は無言で受け取るが食べようとはしない。
ありがとうとか言ってくれるかな?と期待したけどダメだった。


その時次の時間のチャイムが鳴り、俺は席に戻ることになる。



「じゃあ戻るね」

『……』



返事なし。
あとちょっとだったのにと悔やむ気持ちで席に向かう。
戻る前に振り返って愛澤さんを見ると、

驚いた。





彼女はハチミツ味の飴を大事そうに持ちながら微笑んでいた。





初めて見た笑顔。
可愛かった。
愛澤さんは笑うと可愛い。

ドクンと胸が高鳴った。





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