春夏秋冬物語

驚きでポカンとして口を開けているオレに女の人はハンカチを差し出した。

「顔、拭いて。泥がついてる」
「あ、ありがと……ございます」

いつものくせでタメ口になりかけたけど、慌てて付け加えた。
受け取ったハンカチは綺麗な花の刺繍がしてあって、普段オレが持っているようなハンカチとは天と地ほどの差があった。

オマケに良い香り。
勘違いすんなよ、変態な訳じゃない。

「他、怪我してない?」
「大丈夫です……えっと、洗って返します」
「いいわよー。ぶつかっちゃったのはあたしの方だから」
「いや、オレも悪かったから……、名前何ですか」

オレが名前を訊くと、女の人は少し目を見開いて、こう言った。

「ゆきよ。雪に夜で雪夜」
「雪……」

ストライク!
変態じゃないぞ。
雪夜とかオレなんか分かんねえけど、嬉しいぞ!

「お、オレ、冬生。本田冬生です」
「冬生くんか」

雪夜さんは微笑んだ。
やっべ綺麗。鼻血出そう。

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