流星ラジオ
羽美は書きかけの手紙と写真立てをしまい、砂名に向き直る。
「砂名、私が海月を待つことはそんなにいけないこと?」
「だって、もし海月が羽美を捨てて別の女の所に行ってたらどうするの!?
そうなったら羽美は、もっと哀しい思いをする」
羽美はその言葉に、小さく首を振った。
「私は、海月を忘れる方が哀しいよ」
一度こびりついてしまった思い出も、彼へ向けた想いも。
忘れる方がつらいのだ。
それならこのままここで待っている方がいいと。
彼女は自ら苦しい道を選んだ。
「つらいことは多いけど、さ。海月が帰ってきた時になんて言おうか考えたり、ご飯は何を作ってあげようかって思ったり。結構楽しいんだ」
本当はとっくにそんなことを考える余裕なんてなかった。
そんな風に前向きな気持ちになれていたのはいつまでだろう。
今では思い出にとらわれて、マイナスな方向に傾く気持ちを抑えつけるので精一杯だ。
それでも砂名が泣いてくれるから、羽美は自分を取り戻すことができるのだろう。