月物語 ~黒き者たちの宴~



その時一人の女官が目に留まった。



庖厨殿の働き手であろうその女を、礼は知っていた。



あまりにも驚いて、一瞬どうしてよいかわからなくなった。



駆け寄ろうとしたが思いとどまる。



今は王だという自覚があった。



そんな自覚がいつから生まれたのだろう。



だが、彼女を見間違えるはずがない。



―まさか…



この世界が何なのか一つの可能性を見いだしたのだった。




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