月物語 ~黒き者たちの宴~
案内されながら、さっきから気になっていることを獅子に聞いた。
「あたなは棍棒を扱うの?」
「持ってみるか?」
「これ獅子。」
東苑が咎めるより早く、獅子は棍棒を半ばを無理やり礼に持たせた。
礼はその重さに耐えきれず、思わず落とす。
ガランという、乾いた音が宮内を響いた。
軽々しく持っていたことが信じられない。
「民の命はもっと重いんだぜ。」
礼の目に、獅子の瞳が飛び込んでくる。
しかしそれは一瞬で、獅子は棍棒を拾うと、さっさと次の部屋に歩いていった。