月物語 ~黒き者たちの宴~
―嫌み?
あたしが何したって言うのよ。
何もしていない。
何もしていないから民を苦しめてもいないばず。
そう思っても、何故だか胸が痛かった。
妙に長い階段を降りた。
奧には扉が一つあり、牢兵と獄吏が立っていた。
ここは牢獄のようだ。
この世界の牢獄がどんなものか残酷な興味が湧いた。
が、さすがに東苑に止められ踵を返す。
引き返し階段を登りかけたところで、ふと、あの感覚が蘇った。