月物語 ~黒き者たちの宴~



『再びここへ―――』



耳の、いや、頭の奥で女の声がこだまする。



やはり空耳ではない。



誰かが礼に呼びかけている。



「どうした?」



立ち止まった礼を獅子が振り返えった。



「―――いや。」



礼は、来た階段をまた登る。



後ろを歩く東苑は、目を細めて礼の様子を見ていた。



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