月物語 ~黒き者たちの宴~



――――――――――――――――――――――――



男の弟は、本気で喜んでいるようだ。



「兄上にお茶を入れてもらえるなんて、何年ぶりでしょう。」



弟の満面の笑みに、些か気が引ける。



これで最後だとわかっているからだろうか。



自分には似合わないことをしている。



そう、最後だから。



「赤子州へは、明日出立か。」



「はいっ!」



どこまでも無邪気で、人に慕われる男だ。




< 128 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop