月物語 ~黒き者たちの宴~

―5―




─翌日。



「思いがする」という礼独自の現象は、本当に起きなかった。



そして同じ刻、同じ場所に、宋春の姿はあった。



礼は付き人を置いて向かった。



雉雀とそれなりの話をするには、一人の方がよいと思ったからだ。



いきなり襲われることも考えにくい。



回廊を歩く間、礼は男を観察した。



美しい顔は、何も語ることなくただ仕事をこなす。



雉雀の純過ぎるほどの部下だ。


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