月物語 ~黒き者たちの宴~



礼は、黙って腰を下ろした。



やはり、彼女を嫌いにはなれそうもない。



しかし、テーブルのしたで足に取り付けた小刀に触れた。



光燐が持たせたものだ。



宋春が一瞬礼の方を見た。



―バレてる。



「…っ…っ…、すまぬ。」



雉雀は息も耐えだえ呟く。



雉雀の目は、老人の目だ。



何を恐れよう。



危ういのは右寂の男だ。



礼が小刀に触れるのに、気づいていた。



暫く、ち雀が落ち着くのを待つ。


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