月物語 ~黒き者たちの宴~
「ようこそ赤国へ。
わたくしは、天の言葉を聞くもの。
火の太常、劉 向(りゅう きょう)にございます。」
もう一度頭を下げると、礼に近寄り、軽くお辞儀をしてから礼に手を差し伸べた。
とても優しそうな老人だ。
礼はその手を取って立ち上がった。
少し目線が高い気がしたが、考える間もなく一人の男が口を開いた。
「わたくしは、少府に就く…」
「よさぬか!」
男の言葉を、一人の女が遮った。
女は礼をちらりと見た後、再び平伏した。
一瞬のことであったが、礼は品定めされた気がした。