月物語 ~黒き者たちの宴~
先頭の女官が頭を上げた。
「わたくしは、筆頭女官に就く陰 彩夏(いん さいか)にございます。」
母親と同じくらいの年齢だろうか。
物腰の柔らかい、美しい女性だった。
「よろしく頼む。
で、朱雀はどこにいるの?
いろいろと聞きたいことがあるのだけど。」
家来たちより、一番に会うべきは朱雀ではないのかと礼は思った。
彩夏の顔がこわばる。
礼は怪訝な顔で、劉向を振り返った。
劉向は彩夏を見て頷くと、深いため息をついた。