月物語 ~黒き者たちの宴~
「わたくしの娘の身体でございます。
主上は魂だけの存在と聞き、恐れ多くも器として献上した所存にございます。」
礼が魂の存在であるというのは、そのままの意味らしかった。
身体が存在しない。
しかし、疑問が残る。
「では、そなたの娘の魂はどこにおるのだ?」
彩夏は少し目を伏せたがそれは気のせいだと思うほど一瞬で、すぐに微笑んだ。
「天でございます。
もはや、その身体は主上のもの。
何も気になさらず、思うままにお使いください。
娘は、飛燕(ひえん)は、主上の御身体に選ばれたことを幸せだといっておりましたから。」