月物語 ~黒き者たちの宴~
「お心のままに。
何もご心配されることはございません。
扇を受け取ればよいのです。ただ、それだけです。」
少女はにこりと笑った。
その柔らかな表情に、身体の肉が溶けていくようだ。
「あなたの名は?」
「光燐(こうりん)と申します。」
優しい響きが、彼女に似合う。
―名前…
ふと、武則天の言葉が蘇った。
―最後の言葉、どういう意味だったんだろう。
名前の由来。
礼儀正しくなるようにと両親がつけた名。
―他に意味が?
そうこう考えているうちに、式の時間がきた。