月物語 ~黒き者たちの宴~



『大丈夫―』



脳内に優しく響いた。



心の声か、空耳か。



身体と心臓が別々に動いていたものが、急に落ち着きを取り戻した。



一礼して匡癒が立ち上がる。



「これより、赤国国王即位式を執り行う。主上前へ。」



匡癒は段の下から微笑んだ。



礼は一歩前へ出る。



すると、正面の扉が開かれた。



礼が入ってきた扉だ。



一組の男女が現れた。



―この人が…


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